ことばのぬりえ

こどもの人へ

ことばが生まれるとき、こころのなかに道ができます。

行き先は、あなたがきめます。

塗ることば、塗らないことば、そのあいだで、みつけることば。

あなたのこころで結晶したことばは、あなたの勇気になります。

ことばは、ある日、とつぜんやってきます。

驚かないように、訓練する勇気。

大人な人へ

こころでことばを塗る。一日を塗る。こころでことばを選ぶ。ことばをこころに運ぶ。日々を生きる。

ことばを塗る。とは、意味するものと意味しないものを塗りわけることだ。

生きることばは、わたしがわたしたちの何をことばにできないかを明らかにする。

自身が世界というものを、どのように感じ、どう考えているのか。

ことばづかい。とは、ことばをどう使ったか、どう使うか、つまり、わたしとことばのつきあい方である。

つまり世界というわたしたちとの関係の仕方である。

どのように世界を感じ、わたしの生をどのように担っているかを、ことばはさししめす。

ことばは輪郭を振動させる。その境界をくっきりと選びとる。

ことばは、文字と文字の間をわけもち、行間に、ことばにならないことばを内包する。

行間の沈黙をさそいだす月の光。ことばの季節に風が吹き抜ける。

書くことのはじまりは、読むことだ。

話すことのはじまりは、聞くことだ。

ことばをなりたたせることばの響きや色合い、温度や呼吸を、そのことばがしるしつづける限界の経験を、みつける。

想像力をきわだたせる限界の経験をくりかえし、しるしつける。

ことばの限界に指をなぞらえ、いのちの一日の限界をゆっくりと裏切りながら、眠りにつく。

あなたに/上田假奈代