MEKAKO 2/1

あたしはメカコ

道端のもう薄黄緑の花のまじるフキノトウの群生する土手に押し倒してアントーニオはそう呼んだのだ
二度も三度も
鼻先に春めかした土が湿っていた

メカコその家にやってきたのはずぶ濡れの母。

お久し振りの水槽の掃除をして緑の濃い水垢をきっぱりキオスクに預けるとさっさと出かけるわよと
さっさと何枚ものスカアトをピラミッドのように重ね
さああなたも急ぎなさいと
急いでも急いでもいつまでたっても出発地点から一歩も進めないのにちゃんと目的地に着いてるものはなーんだと
仕掛けてくるので
それは老人dayサービスの車椅子に乗った隣の婆だと言うと違うと言う

仕方がないのでカトリーヌに電話をしているうちに母はスカアトとスカアトとスカアトとスカアトの間に埋もれてしまって行方がわからなくなってしまう。

痕跡のない縫い目にはかすかな体臭が残るがそれは、嘘もない蟹のような冬のにおいだった。

唐突にそそりたった海岸にも海岸線はつづき、寄せては離し、引いては打ち寄せる飛沫は繰り返し墓のない忘れられたものたちのはかないその名を呼んでいる

砂色の額縁には消えた父の証に棲みついているクモが
アレグロもっとアレグロな目詰まりを起こしそうな大家族を築き上げ
夜毎の夕餉の綺羅星の予告編にその名を刻みつけたのだ

メカコあたしの名を呼べば、みんなが振り返る

メカコその名を口の端にすればそれまでのこと

メカコみつめあって溶けてしまってもまた再生される

メカコ逃げろ!と叫ぶので、闇雲に暗がりの路地を駆けると車椅子に乗った婆がこっちだと手を振った

メカコそっちは危ない!とまた別の黒い服を着た男が腕をつかむ

メカコこっちに来なさい!とまた別の赤い服を着た女が足をつかむ

メカコあたしは一体どこへ行くのだろうと目をつぶる

メカコこのまま餌食になってしまう前に

メカコ朝に食べた目玉焼きが真昼になると、ハラヘリと泣く

メカコとにかく、こいつのハラヘリをなんとか。

メカコ昨日もこうして、一番身なりのよい人についていったのだ

メカコたぶんとりかえしのつかない一生だろう

メカコ一直線に今日も極つぶしをゆく。

メカコ